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古材文化の会
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民家再生による環境負荷・コストの削減効果

2000 年8 月

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第1部

第2部

第3部

事例における評価結果

参考文献

2.1 民家再生の評価手法

2.1.1 評価の枠組

  再生工事が行われなければ、旧邸は全面解体されて部材は全て廃棄され、更地に新しく新築する工事(以下「建替工事」と表記)が行われたと考えられる。そこで、本報告書では図-2.1.1のように再生工事に対して建替工事を想定し、これを比較対象として評価を行った。
  なお、建替工事においては、機械解体を行って廃棄物を可燃と不燃に分類し、可燃廃棄物については焼却して不燃廃棄物とともに埋立するものとした。また、再生工事が行われた場合と同じ家屋が、新材を用いて建てられるものとした。
  比較評価は床面積あたりで行ったが、再生前の旧邸と再生後の新邸では延床面積が異なるこ
図-2.1.1 比較対象
図-2.1.2 工事区分
とから、解体工事と築工事に分けて分析を行った。なお、本報告書で用いた工事区分は図-2.1.2 のとおりである。

2.1.2 評価の項目

(1)環境負荷

●投入される資源(11 項目) 

エネルギーの使用等に関連する資源として、原料炭、一般炭、原油、LNG、天然ガスを、建築活動に関連する資源として、鉄鉱石、石灰石、骨材、木材を、さらにエネルギー(化石燃料等起源、バイオマス起源)を取り上げた。直接的には、現場で使用される燃料及び電力、木材や廃棄物の輸送で使用される燃料の消費(以上、エネルギーのみ)がある。また、間接的には、現場に投入される資材、燃料及び電力の製造に伴う資源の消費がある。

●排出される廃物(6項目) 

発生廃棄物とともに、環境負荷という観点から埋立廃棄物を取り上げた。直接的には、解体現場から発生する解体廃棄物と、建築現場から発生する新築廃棄物がある。また、間接的には、現場に投入される資材の製造に伴い発生する間接廃棄物がある。  エネルギーの使用及び木材の焼却等に関連する廃物としてCO2(化石燃料等起源、バイオマス起源)、SOx、NOxを取り上げた。直接的には、現場で使用される燃料の燃焼、木材や廃棄物の輸送で使用される燃料の燃焼、及び発生した廃棄物の焼却に伴う排出がある。また、間接的には、現場に投入される資材、燃料及び電力の製造段階における燃料の燃焼、工業プロセス及び廃棄物の焼却に伴う排出がある。(2)コスト  解体コストと建築コストを取り上げた。建築コストは図-2.1.2に示されるような項目から成る。

2.1.3 環境負荷の計算方法

(1)積み上げ法と産業連関法 

ある製品や活動の環境負荷を評価する手法として、ライフサイクルアセスメントがあるが、本報告書でもこの考え方を採用した。ライフサイクルアセスメントの概要については、「3.1 ライフサイクルアセスメント(LCA)」を参照していただきたいが、本報告書ではインベントリー分析までを行っている。
インベントリー分析、すなわち、ある製品や活動の環境負荷を計算する手法としては、積み上げ法と産業連関法がある((社)未踏科学技術協会[1995])。積み上げ法は、個々のプロセスにおける環境負荷を調査して積み上げることから、詳細なプロセス分析が可能な反面、建築物のように多様な資材を用いる製品では、データ収集が現実的に困難である。一方、産業連関 法は、産業連関表を基礎データとして使用することから、分析の精度あるいは確度は落ちるも14のの、包括的な分析が可能であり、これまで土木構造物・建築物の分析で汎用されてきた。
本報告書では基本的に、解体現場及び建築現場で発生する負荷を「直接負荷」として積み上げ法で計算し、現場に投入される資材やサービスの製造プロセスで発生する負荷を「間接負荷」として産業連関法で計算したが、廃棄物処理サービスについては、図-2.1.3のような扱いとした。すなわち、可燃廃棄物の焼却に伴って発生するCO2、SOx、NOx や埋立廃棄物(焼却残渣を含む)については積み上げ、これを処理・処分するために投入される資源や排出される廃物については産業連関法を用いた。
また、プラントの建設・各種製造機械の製造など、資本財生産に関わる負荷について、本報告書は考慮しない。
(2)積み上げ法で計算する負荷の調査と計算の方法 

調査は実際に行われた再生工事で行い、比較対象となる建替工事は、これに見積書、設計図、業者へのヒアリング等を加え計算した。

●再利用資材
再生工事の再利用資材(木材、建具、畳、基礎、壁土、瓦)量は、実測調査及び設計図から資材を拾い出し体積を計算した。実測調査の可能な事例については現場で再利用部材の調査ができるが、過去の再生事例については現場調査が不可能であるため設計図と写真から計算を行った。図面上の不明な部分等については、同事例で同部位に使用されている部材と同様の寸法とするか、表-2.1.1、表-2.1.2 に示されるように、同部位に用いられる部材の標準的な寸法を用いた。
建替工事にあってはこれらが新材として投入されることとなるが、木材については、継ぎ手、仕口を加工するための余裕を持たせ、新材の投入量として見積もった。

●解体廃棄物
再生工事の解体廃棄物量は、実測調査及び設計図から資材を拾い出し計算した。実測調査の

図-2.1.3 積み上げ法で計算するプロセスと産業連関法で計算するプロセス可能な事例については、現場でトラックに荷積みされ搬出される廃棄物の体積を調査し、これを廃棄物の見かけ比重(橋本ら[1999])を用いて重量に換算した。また、過去の再生事例については現場調査が不可能であるため、再利用部材と同様、設計図(施工前の現況図)と写真から資材の拾い出しを行い重量に換算した。
建替工事の解体廃棄物量は、調査した再生工事の廃棄物量に再利用資材量を加えることで算出した。
なお、埋立廃棄物量は、可燃廃棄物については焼却による減量率を90%とし、不燃廃棄物はそのまま最終処分するものとして計算した。

●新築廃棄物
再生工事の新築廃棄物量は、工務店工場で継ぎ手、仕口を刻む際に発生する木くず量を調査した。過去の再生事例については現場調査が不可能であるため、調査が可能であった再生事例の廃棄物量とその工事に必要な構造材量から単位構造材あたりの廃棄物原単位を求め(0.49m3/m2、36.43kg/m2)、これを過去の再生事例で必要とした構造材量に乗ずることで計算した。

表-2.1.1 標準寸法(木材)
表-2.1.2 標準寸法(木材以外の部材)
 

建替工事の築廃棄物量は、同じ原単位を用いて、建替工事に必要な構造材量に乗ずることで計算した。
また、現場で発生する建築系混合廃棄物については、既存の発生原単位(床面積あたり)((社)建築業協会[1997])を用いた。

●エネルギー(解体工事)
再生工事のエネルギー消費量は、現場で用いられた小型のバックホー及び工具に使用された燃料と電力を調査し、また、廃棄物が実際に輸送された距離から必要燃料を計算し、係数(資源エネルギー庁[1998])を用いてエネルギー量に換算した。過去の再生事例については現場調査が不可能であるため、調査が可能であった再生事例を参考に設定した。
建替工事のエネルギー消費量は、解体業者へのヒアリングから大型のバックホーを用いて機械解体することを想定して必要燃料を計算し(燃費を5.0l/hr、運転時間を6hr/day、解体床面積を33m2/day)、係数(資源エネルギー庁[1998])を用いてエネルギー量に換算した。また、廃棄物が実際に輸送された距離から必要燃料を計算し、係数(資源エネルギー庁[1998])を用いてエネルギー量に換算した。過去の再生事例については現場調査が不可能であるため、調査が可能であった再生事例を参考に設定した。

●エネルギー(建築工事)
再生工事のエネルギー消費量は、工務店工場で使用された電力、現場で使用された電力を調査し、また、木材や廃棄物が実際に輸送された距離から必要燃料を計算し、係数(資源エネルギー庁[1998])を用いてエネルギー量に換算した。過去の再生事例については現場調査が不可能であるため、調査が可能であった再生事例を参考に設定した。
建替工事のエネルギー消費量は、再生工事において工務店工場で使用された電力と再生工事に必要な木材量から単位木材あたりの電力原単位を求め、通常工事に必要な木材量に乗ずることで必要電力を計算し、木材や廃棄物が実際に輸送された距離から必要燃料を計算し、係数(資源エネルギー庁[1998])を用いてエネルギー量に換算した。なお、現場で使用された電力は再生工事と同じとした。

● CO2、SOx、NOx
上記の燃料使用に伴うCO2、SOx、NOx排出量は、燃料消費量に係数((社)プラスチック処理促進協会)を乗ずることで排出量に換算した。
可燃廃棄物の焼却に伴う排出量は、廃木材の元素組成(片岡ら[1990])から、C、S分についてはすべてCO2、SOxになるとして計算し、NOxについては産業廃棄物焼却炉の排出係数(脱硝なし)(環境庁[1998])を用いて計算した。

(3)産業連関法で計算する負荷の計算の方法  見積書に記載された資材について、産業連関表(総務庁[1994])の相当する産業部門への割り当てを行い、資材価格にその産業部門の購入者価格あたり環境負荷原単位を乗じることで、間接的な環境負荷を算出した。本報告書で用いた環境負荷原単位については「3.2 産業連関法により作成した環境負荷原単位」を参照されたい。
なお、産業連関法では環境負荷が製品価格に比例するため、同じ製品でも価格が異なると負17荷が異なるといった問題が生じる。従って、以下のような補正が必要であり、本報告書でもこれを行った。

●標準価格への補正
建材価格はその取引相手あるいは取引量の大小によって異なる。そこで、見積価格をできるだけ平均的、標準的な価格に補正する必要がある。
本報告書では、産業連関表に付帯する部門別品目別国内生産額表(総務庁[1994])に価格が記載されているものについてはこれを用いて購入者価格を設定し、記載のないものについては積算ポケット手帳(建築資料研究社[1998])、積算資料((財)経済調査会[1998])などからできる限り平均的と考えられる価格を拾ってこれを用いた。

●材工価格の材価格への補正
見積価格は建材費(材価格)と人件費(工事価格)が一体となった材工価格であることが多い。そこで、計算にあたっては材工価格から建材費(材価格)を分離してこれを計算に用いる必要がある。
本報告書では、積算ポケット手帳(建築資料研究社[1998])等を用いてできる限り材価格への補正を行った。

● 1990 年価格への補正
原単位を作成するにあたって用いた産業連関表は1990年表である。そこで、計算に用いる価格は1990 年の価格に補正する必要がある。
本報告書では、デフレーター(日本銀行調査統計局[1996、1998])を用いてできる限り1990年価格に補正した。なお、上記の国内生産額表に記載の価格を用いる場合にこの補正は必要ない。

2.1.4 コストの計算方法

(1)解体コスト  建替工事については、解体業者から床面積あたりの解体費、廃材運搬処分費、ガラ及び基礎撤去処分費などについてヒアリングし見積った。なお、別途全面機械解体の見積もりがなされているものについては、これをそのまま用いた。(2)新築コスト

●基礎工事
建替工事について、工務店から再利用される基礎の工事費をヒアリングし見積もった。

●木工事
木材費について、木材の建築部位別の平均的な単価を見積書から計算し、これに残存している建築部位別の木材量を乗じて見積もった。また、大工施行手間について、現地再生工事における新築部分と改修部分の床面積あたりの大工施行手間を計算し、これに新邸の床面積を乗じて見積もった。

●左官工事
建て替え工事について、再利用される壁の面積と壁面積あたりの工事費から見積もった。

●木製建具工事
建て替え工事について木製建具の種類別の平均的な単価を見積書から算出し、これに再利用される木製建具を乗じて見積もった。

2.2 七事例における評価結果

2.2.1 対象7事例の概要

古材バンクの会会員の建築家による7事例を対象とした。これら住宅の建築年代と延床面積などについてまとめたのが表-2.2.1 である。旧邸、新邸とも延床面積の平均は200m2程度と、比較的大規模な住宅となっている。また、建築年代は江戸中期から昭和初期にわたる。
  なお、民家の再生は、複数の工事形態の複合体と考えられるが、本報告書では再生住宅を表-2.2.1に示す5種の工事部に分類してその床面積比率を計算し、再生のおおよその内容を表現することとした。用いた用語の定義は以下のとおりであるが、改修、改築等は一般的な定義と異なっているので注意されたい。 改装部 柱軸組及び壁の芯・下塗り等が既存の状態で、天井の板貼り替え・壁の塗り替え等、内装の補修を施した部分。施工前後の間取りは同じとなる。 改修部 柱軸組が基本的に既存の状態で(柱の追加、間引きなどはある)、壁等の内装を改変させた部分。施工前後の間取りは異なる。(例) 和室二間を居間・食堂として再生 改築部 柱軸組が部材単位で再利用された部分。 解体部 旧邸に於いて、再生されなかった部分。 新築部 再利用部材を用いずに新築した部分。旧邸と比較して床面積の増加した部分。
  事例Aを除いては改装部及び改修部が多くを占めるが、事例Aについては改築部及び解体部、新築部のみで構成され、部材単位の古材再利用が行われた事例となっている。この床面積比率を用いることによって、再生のおおよその内容が表現できるだろう。
表-2.2.1 対象7事例の概要
  以下では、7事例の分析結果をまとめて述べるが、各事例における個別の計算結果について詳細なデータが必要な際には、「3.3 7事例における評価結果の詳細」を参照されたい。

2.2.2 建替工事の環境負荷・コストの特徴

  建替工事の環境負荷・コストの平均値と95%信頼区間をまとめたものが表-2.2.2、表-2.2.3である。解体される家屋と建築される家屋の延床面積が異なることから、ここでは解体工事、
表-2.2.2 建替工事の環境負荷コストの平均値と信頼区間(解体工事)
図-2.2.1 建替工事の環境負荷コストの平均値と信頼区間(解体工事)(平均値を1とした場合)
建築工事別に床面積当たりの平均値と信頼区間を計算している。また、平均値を1として信頼区間の比率を示したものが図-2.2.1、図-2.2.2 である。図によると、解体工事においてはCO2(バイオ)、SOx、NOx の信頼区間幅が大きい。これは、事例によって可燃廃棄物(木くずなど)量のばらつきが大きいためである。また、建替工事のコストの平均値は床面積当たり22万円(=解体工事+建築工事、坪当たり74 万円)となっている。
  さらに、床面積当たりの環境負荷・コストの工事別構成を見たものが図-2.2.3 である。解体される家屋と建築される家屋の延床面積が異なることから、厳密には解体工事と建築工事(基
表-2.2.3 建替工事の環境負荷コストの平均値と信頼区間(建築工事)
図-2.2.2 建替工事の環境負荷コストの平均値と信頼区間(建築工事)(平均値を1とした場合)
礎工事、躯体工事、仕上工事、設備工事)を同じ図に表示することは不適切だが、ここでは環境負荷の工事別構成の目安を得るためにこのような図を作成した。図によると、ほとんどの環境負荷で建築工事(基礎工事、躯体工事、仕上工事、設備工事)における負荷が大きな比率を占めるものの、CO2(バイオ)、発生廃棄物、埋立廃棄物においては、解体工事が大きな比率を占めている。従って、以下で削減率を検討するにあたっては、この点に注意しなければならない。また、一般炭、石灰石、骨材においては基礎工事の占める比率が、木材においては躯体工事の占める比率が、他の環境負荷においては仕上工事の占める比率が大きくなっている。また、コストでは躯体工事、仕上工事の占める比率が大きい。

2.2.3 再生による環境負荷・コストの削減効果

  各環境負荷の削減率を解体工事、建築工事別にまとめたものが図-2.2.4、図-2.2.5 である。いずれの工事においても、事例D、F で大きな削減効果が得られた。
  解体工事(図-2.2.4)においては、発生廃棄物の削減効果が他の環境負荷の削減効果に影響を与える。原料炭から木材までの資源項目の削減効果が一定となっているのは、これらが廃棄物の処理・処分に関わる波及的な資源消費を計算した結果であるためである。従って、発生廃棄物の削減効果にほぼ一致する。一方、発生廃棄物の削減効果に対して、CO2(バイオ)、SOx、NOx の削減効果が事例によって異なるが、これは、可燃廃棄物の影響である。即ち、可燃廃棄物が多く削減された場合、CO2(バイオ)、SOx、NOx の削減効果が大きくなり、逆に、可燃廃棄物があまり削減されなかった場合、CO2(バイオ)、SOx、NOx の削減効果も小さくなるのである。
  なお、先述したように、解体工事の削減率を検討するにあたっては、CO2(バイオ)、発生
図-2.2.3 建替工事の環境負荷・コストの工事別組成
図-2.2.4 環境負荷の削減効果(解体工事)
図-2.2.5 環境負荷の削減効果(建築工事)
廃棄物、埋立廃棄物の削減効果は工事全体の負荷に大きな影響を与えるが、他の環境負荷はとんど影響を与えない。従って、この点を考慮して結果を解釈する必要がある。
  建築工事(図-2.2.5)においては、解体工事と比較すると削減効果が小さく見えるが、先述のようにほとんどの環境負荷で負荷削減の絶対量は建築工事の方が大きくなる点に注意を要する。構造材、木製建具などの再利用によって木材で、また、基礎石・コンクリートの再利用によって一般炭、骨材、石灰石などで大きな削減効果が得られる結果となっている。中でも事例Fでは大きな削減効果が得られ、また他の事例と比較して特異な傾向が見られるが、これは事例F が、木構造とともに既存の布基礎をそのまま再利用したためである。
  また、解体工事と建築工事あわせて環境負荷の削減率をまとめたものが図-2.2.6である。旧
図-2.2.6 環境負荷の削減効果(解体工事+建築工事) 表-2.2.4 コストへの影響(+は増加、-は削減)
邸と新邸の延床面積が大きく異なる場合は単純に事例間の比較はできないが、対象とした7事例においてその違いは小さい。図によると、木材、CO2(バイオ)、発生廃棄物、埋立廃棄物などで高い削減効果の得られることが分かる。
  さらに、コストの削減率をまとめたものが表-2.2.4である。手解体を行うことから解体工事でコストは増加するものの、建築工事で削減され、工事全体としては7事例中、2事例で増加、5事例で削減される結果となった。環境負荷の削減率が高かった事例E、Fでコストの削減効果も高くなっている。コスト増減の内訳を見ると、解体工事、大工手間、古材の洗いなどで増加するものの、木材費、基礎工事、木製建具工事などで削減される結果となった。従って、後者が前者を上回った場合に全体としてコストの削減効果が得られる。

2.2.4 建築工事における木材の再利用率と環境負荷の削減効果

  建築工事における木材の再利用率を再生の度合いを表す指標とし、工事全体の環境負荷の削減率との関係について見たものが図-2.2.7 (1)、図-2.2.7 (2) である(なお、特異な傾向を示した事例F を除いている)。図中には同時に、切片を0として直線近似した結果を数式(相関係数)とともに記している。
  再生にあたって、再利用の基本となるのは構造材としての木材であるが、木材の再利用率を用いると、比較的他の負荷の削減効果を表現できる。もちろん、木材の再利用率のみでは、事
図-2.1.7 (1) 建築工事における木材の再利用率と環境負荷の削減効果
例Fで見られるような基礎等の再利用を表現することはできず、鉄鉱石など相関係数の低い負荷も見られる。今後、事例研究を積み重ねる中で、表-2.2.1 で示したような床面積比率、建材の再利用比率等を指標に含めることを検討しなければなるまい。
  図によると、木材、CO2(バイオ)、発生廃棄物、埋立廃棄物で比較的大きな削減効果が得られることが分かる(それぞれ傾き-1.09、-1.11、-0.70、-0.76)。木材の削減効果が再利用率よりも大きくなるのは、現場で投入される木材以外にも、他の建材や設備の製造段階で生じる木材消費が計算されるためである。また、CO2(バイオ)は解体工事における廃木材の焼却による負荷がほとんどであるため、木材の再利用率に近い削減率となっている。ただし、ここで指標として用いているのは建築工事における木材の再利用率であり、解体工事における木材の再利用率ではない。繰り返しになるが、旧邸と新邸の延床面積が大きく異なる場合に、この議論は適切ではない。他の環境負荷については傾きが-0.1~-0.5 の間にあり、木材の再利用率1に対して、0.1~0.5 の削減率が得られることを示している。
  民家再生は多くの環境負荷を削減するが、中でも上述した4つの環境負荷(木材消費量、CO2(バイオ)排出量、発生廃棄物量、埋立廃棄物量)において大きな効果を得る。

2.2.5 建築工事における木材の再利用率とコストの関係

  また、建築工事における木材の再利用率と工事全体のコストの削減効果の関係について見た
図-2.1.7 (2) 建築工事における木材の再利用率と環境負荷の削減効果
ものが図-2.2.8 である(事例Fを含む)。図によると、木材の再利用率が小さい場合は、人件費の増加が建材費の削減を上回って、通常の建替より数%コスト増になるが、一定の再利用率を超えると、人件費の増加が建材費の削減を下回って、コスト減になることがわかる。このコスト増減を決める境界は、木材の再利用率20%の付近である。再利用率がこれを上回るとコスト削減となり、下回るとコスト増加となる可能性が高いことを示している。
  従って、一定の再利用が達成できれば、民家再生が通常の解体・新築に比較して安くなる可能性がある。再生によって得られる住宅と同じ住宅を建てるとすれば、再生は必ずしも高い買い物ではない。

図-2.1.8 建築工事における木材の再利用率とコストの削減効果